みなさん、こんにちは!
本サイトではいつも日常で使える心理学の知見を紹介しているのですが、今回の記事は少しだけいつもと違う内容です!
日本心理学会が発行している2022年1月の心理学ワールドでとても興味深い特集が組まれていたので、その特集について考えてみたいと思います!
その特集は「研究を社会に伝える」というもの。心理学の知見をどのように社会に伝えていくべきかについて議論されています。
これを受けて、本サイトでは心理学の知見を受け取る側の心構えについて少し考えてみたいと思います。
ここで「心理学ワールド」の内容をすべて紹介するのは転載になってしまうので割愛します。
直接読んで確認したいという方は日本心理学会のページへどうぞ。
では、早速行ってみましょう!
擬似心理学にご注意を!
世間に蔓延する擬似心理学
書店の新書コーナーに立ち寄ってみると、タイトルに「心理学」とついた自己啓発本を最近よく見かけます。
書籍以外にも「心理学」を紹介しているyoutube、ネット記事などを頻繁に見かけるようになってきました。
何を隠そう本サイトでも、心理学の知見をみなさんに紹介しています。
みなさんは、これらの情報が「間違っている」かどうか考えたことはありますか?
「へぇ〜なるほど」と鵜呑みにしているの人も多いのではないでしょうか。
もちろん、世間に広まっている心理学の知見のほとんどは正しい情報だと思います。
しかし、伝え方が微妙に異なっている情報だったり、中には誤った情報をそのまま紹介しているものもあるのです。
具体的に「〇〇はデタラメだ」と紹介することは誹謗中傷に当たるので避けますが、世間一般的に広まっている「心理学」は必ずしも正しいとは限らないのです。
ちなみに心理学ワールドでは、これを「擬似心理学」と表現されていました。
擬似心理学の証明は難しい
とはいえ、世間一般で広まっている擬似心理学を否定することは難しいです。
心理学ワールドにも記載されていましたが、研究者にとって、擬似心理学を「誤りである!」と否定することは、労力がかかる上に見返りも少ないようです。
これは確かにその通りだと思います。「間違いだ!」と指摘するには、その証拠をたくさん用意しなきゃいけないですもんね。
また、擬似心理学を紹介してしまう人たちも悪意があるとは限りません。
善意で紹介したものがたまたま間違っているなんてことも大いにあり得るでしょう。
そこで、私たち自身が日頃から擬似心理学に騙されないように気をつけておくことが大切です。
極端な話をすれば、名前の通った「学術雑誌」に投稿されている論文を読めば、おおよそ間違いはありません。本サイトでも記事を書く上では論文化されているものをベースにしています。
ただし、世間一般の人々にとって論文を読むなんてことは、かなりハードルの高いことですよね。
だからこそ、私たちは書籍やネットの記事、youtubeなどに頼ってしまうわけです。その上で、正しい情報を自分たちで選んでいくことが必要になるのです。
擬似心理学に騙されない3大ポイント
ここでは、私が普段情報を収集するときに気をつけているポイントを3つ紹介します。
①書籍やネットの記事の著者を見る
私が書籍やネットの記事を閲覧する時に最初に注意するのは、「その文章を誰が書いているか」です。
心理学の専門家が書いている文章なのか、それとも一般の人が書いている文章なのかによって、その情報の信頼度は変わります。
心理学だけに限らずとも、経済や化学等あらゆる情報に触れる際にも、「その道の専門家」が発信しているのかどうかをチェックすることは大切です。
私は本屋で面白そうな書籍を見つけたら、その書籍を誰が書いているのかをチェックすることを心がけています。
また、専門家が発信している情報以外にも正しい情報はたくさんあります。
専門家でなくても、著者がどんな経歴の持ち主かどんな仕事をしているのか確認することは大切だと思います!
さらに、著者の情報を確認することは、その情報が自分にとって必要なものか判断するのにも役立ちます。
本サイトで例えてみると、以下のようになります。
臨床心理士/公認心理士が一般企業に就職した経験を使って、
ビジネスに応用できる心理学を紹介します!
うん!自分もビジネスに心理学を応用してみたい!
どれどれ、内容を見てみるか!
私は心理学を専攻していて、最新の専門的な知見が知りたいのよねぇ
あんまり参考にならないかしら?
著者の情報を見ることで、正しい情報が得られるかどうか、そしてその情報が自分にとって有益かどうかを判断できるのです。
②参考文献を見る
ビジネス書を読んでいると一番最後のページに「参考文献」として英語がズラズラと並んでいることってありますよね?下の図は、本サイトのとある記事の参考文献です。
参考文献とは、その文章を書く際に「私はこの論文や本を参考にしましたよー」と宣言するものです。
次は、ここに注目してみましょう。
この参考文献のページを見れば、その作者がどれだけ他の文献を参考にしているかを確認することができるのです。
多ければ多いほど良いというわけではありませんが、ある程度参考文献があった方が信頼性は増すと思います。
逆にいえば全く出典が書いていないものは著者の思い込みや考えをただただ披露している場合があるので注意してください!
また、時間があったら参考文献に書かれている論文のタイトルを読んでみましょう。
タイトルは、その論文の内容を一言で表しているので、「この本は、こんな論文を参考にしてるんだー」と新しい気づきがあるかもしれません。
これは主観なので放っておいて下さって結構ですが、情報の鮮度は、「海外の論文・英語で書かれた論文 >日本語で書かれた論文 > 書籍」だと思っています。
なので、特に、私は全く新しい情報に触れたときは英語で書かれた論文をどれだけ参考にしているかを見るようにしています。
ただし、ネットの記事やyoutubeでは参考文献をすべて表示しきれない場合も多かったりするので、注意してください!
③類似した情報や逆の情報を探してみる
最後に少し変わった着眼点でポイントを紹介します。
心理学の世界には、類似した内容を表す理論がいくつも存在しています。
たとえば、プラシーボ効果という言葉を聞いたことのある人は多いでしょう。
プラシーボ効果とは、効き目の全くない偽物の薬であっても、「効果のある薬だ」という思い込むことで、実際に症状が改善するというものです。
しかし、心理学の世界には、「ノセボ効果」というものがあることをご存知でしょうか?
これは、プラシーボ効果とは逆に、「効果が全くない薬だ」という思い込みがあると、本当に薬の効き目が悪くなってしまうということを示した理論になります。
このように、有名な法則の影に似たようなことを示している法則があったりするのです。
さらには、全く逆のことを言っている法則も存在します。
有名な例が、バンドワゴン効果とスノッブ効果です。この2つの法則を簡単に比較すると下記の通りです。
バンドワゴン効果:多くの人が飼っている商品は、買いたくなる
スノッブ効果:多くの人が買っている商品は、買いたくなくなる
2つの法則が全く正反対のことを表していることに気がついたでしょうか?
このように、一つの法則が絶対的に正しいということは稀で、多くの場合は複数の法則が同時に存在しているのです。つまり、得られた情報をそのまま鵜呑みにしないことが大切です。
私たち人間は、確証バイアスと言って、自分が正しいと思う考えに沿った情報ばっかりを集めてしまう傾向にあります。
ブランドもののバッグを買おうか迷っている時に、そのバッグを高く評価している口コミばかり見てしまうというのがこの確証バイアスです。ある情報を一度信じたら、その情報を正当化する情報をより一層集めてしまうようになるのです。
類似した情報や、反対の情報を探してみることで、正しく情報を理解することが大切なのです!
まとめ
さて、今回の記事は「心理学ワールド」の特集記事を参考に、世間に流布している「擬似心理学」への向き合い方について私の個人的な見解を述べてきました。
さらに「擬似心理学」に惑わされないように私が日頃から心がけているポイントについて紹介しました。改めて、ここにまとめておきます。
いつもは、心理学の知見を紹介している記事をたくさん書いているので、ぜひ他の記事も読んでみてください!
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
(参考)
Beecher, H. K. (1955). THE POWERFUL PLACEBO. Journal of the American Medical Association, 159(17), 1602. https://doi.org/10.1001/jama.1955.02960340022006
De La Cruz, M., Hui, D., Parsons, H. A., & Bruera, E. (2010). Placebo and nocebo effects in randomized double-blind clinical trials of agents for the therapy for fatigue in patients with advanced cancer. Cancer, 116(3), 766–774. https://doi.org/10.1002/cncr.24751
Leibenstein, H. (1950). Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers’ Demand. The Quarterly Journal of Economics, 64(2), 183. https://doi.org/10.1001 / jama.1955.02960340022006
Sanderson, C., Hardy, J., Spruyt, O., & Currow, D. C. (2013). Placebo and nocebo effects in randomized controlled trials: The implications for research and practice. Journal of Pain and Symptom Management, 46(5), 722–730. https://doi.org/10.1016/j.jpainsymman.2012.12.005