人間のやる気の源はどこにある?
みなさんは、内発的動機と外発的動機という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
一般に人間の動機は、自分の興味・関心や成長のためという内側からくるもの(内発的動機)と、報酬や地位・名誉のように外側からくるもの(外発的動機)の2種類に分けられるといわれています。
内発的動機/外発的動機は心理学の世界でかなり古くから指摘されている議論なので、聞いたことのある方も多いかもしれません。
しかし、人間の動機はそんなに簡単に2つに分けられるものではないと指摘するのが、「学習動機の2要因モデル」です。
日本の心理学者/教育学者 市川伸一氏によって提唱されました。
それでは、人間のやる気の源はどこにあるのでしょうか?
自分のやる気の源がわかれば、それを刺激してあげればやる気を引き出すことができそうですよね!
ここから、学習動機の2要因モデルについて説明していきます。
ここから先は、「勉強/学習」を例に挙げますが、「仕事」や「部活動/スポーツ」など自分に置き換えて読んでみてください!
「人はなぜ学ぶのか」、その答えは6通りある。
このモデルによると、人間の学習動機は以下の6つに分けられます。
みなさんのやる気の源はどこでしょうか?
少し考えてみてください!
こうしてみると、上の3つの動機(充実志向/訓練志向/実用志向)は、勉強する内容そのものに興味を持っていることがわかります。
勉強以外では、たとえばスポーツの練習では、「練習自体が楽しい(充実志向)」、「練習することで体力・精神力が鍛えられる(訓練志向)」、「運動神経を向上させたい(実用志向)」のようになるでしょうか。
いずれにせよ、内容そのものに関心がありますね。
特に充実志向は、行為そのものに価値を置いているので、従来の内発的動機(興味・関心のために勉強する)に近いこともわかります。
一方で、下の3つの動機(関係志向/自尊志向/報酬志向)は、勉強の内容そのものよりも、その結果や周辺に興味を持っていることがわかります。
スポーツの練習を例に取ると、「友人も練習してるから(関係志向)」、「ライバルとポジション争いをしてるから(自尊志向)」「部活を頑張ると将来の就職活動に便利だから(報酬志向)」のようになります。
以上に見てきたように、人間のやる気の源は、大きく分けて2つ、細かく分けて6つに分かれることがわかりました!
ここまできても自分のやる気の源がピンときていない方向けに、もう少しだけ説明を続けていきます!
「人はなぜ学ぶのか」、その答えは2つの要因で考えることができる
さらにこの理論は、上の6つの動機を元にしながら人間の動機を考える上で大切な軸を2つ見つけています。
その軸とは、「学習内容が自分にとって重要か」、「学習が直接自分に利益があるか」という2つです。
上でも記述したように、6つの動機は、勉強内容自体が自分にとって重要かどうかで2つのグループに分けることができました。
次にこのグループの中をもう少し細かく見ていきましょう。
勉強内容自体が重要だと感じている人たちの中にも、「それが自分に利益をもたらすかどうか」についての考え方は異なります。
もう少し説明しましょう。
たとえば、充実志向の人(=勉強すること自体が楽しい人)と実用志向の人(=勉強を日常生活や将来に役立てたい人)を比べると、後者の方が、勉強することに利益を感じていますよね。
勉強に利益を求めるかどうか
勉強することが楽しい!!
別に自分の利益にならなくても全然関係ないし、そんなことのために勉強してないよ!
確かに勉強の内容は魅力的だわ!
でも、やっぱり将来の役に立つと思ってるから勉強してるのよ!
このように人間の動機は、「その内容が自分に利益をもたらすかどうか」という視点も大事なのです。
自分のやる気の源を考える上で、この2つの軸を参考にしてみてください。
【まとめ】正しく自分のやる気を引き出そう
ここまでみてきたように、人間の動機はいくつかのパターンに分けることができました。
やる気を引き出すためには自分のやる気の源がどのようなパターンかをしっかりと見極めてあげることが大切です。
たとえば、「関係志向(=友人と一緒に勉強するのが楽しい)」の人にとって、自分が勉強している内容がどれだけ将来の自分に役立つか考えてみても、効果はそこまで大きくないでしょう。
逆に、友人と一緒に勉強する約束をすることは、とても大きな効果があると思います。
みなさんもこの理論を参考に、自分のやる気の源を探して、それを刺激してあげましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
(参考)
市川 伸一 (1995). 学習と教育の心理学. 岩波書店.
市川 伸一 (1995). 学習動機の構造と学習観との関連. 日本教育心理学会 第37回 総会発表論文集, 177.