会社のチームで新しい仕事のアイデアを考えることになったのニャ。
でもみんなアイデアがなかなかでなくて困っているのニャ
新しいアイデアを考えるのって大変だよね。
そうだ!組織の創造力に関する研究があるからそれを紹介するよ!
組織やチームで創造力を発揮したい場面って仕事に限らず多いですよね。
今回は、そんな時に役立つSECI(セキ)モデルを紹介していきます!
SECIモデルに関する説明は書籍やWebサイトで溢れていますので、この記事ではSECIモデルの堅苦しい説明は最小限に抑えて、簡単なストーリー仕立てで紹介していきます!
SECIモデルとは
まずは、SECIモデルについて少し説明します!
知識を共有することで新しい知識を生み出す
私たちは皆、生きていく中で色んな知識だったり経験だったりを積み重ねています。
そしてその知識・経験は、同じチーム・組織に所属していても、人それぞれ異なっています。
個人が持っている知識や経験をチームのみんなで共有出来れば、新しいアイデアが浮んできそうですよね!
このように、チームとして、皆の知識を共有して新しい知識を生み出すプロセスをモデル化したものがSECIモデルなのです!
なら、みんなで自分が持ってる知識を教え合えばいいんじゃないのかニャ?
その通り!
だけど、それが一筋縄ではいかないんだ。
知識には2種類ある
知識を共有するとはどういうことなのでしょうか?
まず、知識には形式知と暗黙知の2種類があると言われています。
形式知とは、言葉や数字などを使って客観的・明示的に表現できる知識のことです。
一方で暗黙知とは、言語化するのが難しい、人々の主観的な知識だったり、経験から学んだ技能のことです。
たとえば、職場における規則や自社製品に関する情報等が形式知にあたります。
一方で、個々人がもちうる営業のコツ等は暗黙知になります。
また、よく言われるのは車の運転です。
自動車教習所では、「学科」と「実技」の2つの科目があります。
学科は、車の乗り方について教室で学ぶもので、これは形式知です。
一方で、実技では、実際に車に乗りながら、運転の仕方を習得していきます。これは暗黙知です。
創造性を発揮するためには、形式知だけでなく暗黙知についても重視する必要があると言われています。
暗黙知から形式知へ
形式知は、言語や数字などで表現できるので、容易に他者に伝えることが可能です。
しかし、暗黙知は、人々の内面に存在する個人的な知識であるので他者に伝達するのは難しいです。
さて、いよいよSECIモデルの出番です!
ストーリーで学ぶSECIモデル
SECIモデルでは暗黙知から形式知を生み出し、その形式知がさらに暗黙知を生み出すというプロセスを4つの段階で説明しています。
それぞれの頭文字をとってSECI(セキ)と名付けています。
それではここから、SECIモデルの4ステップをストーリーを例に挙げながら見てみましょう。
Step1. 共同化
最初のステップでは、組織のメンバー同士で、暗黙知を共有します。
すなわち、組織のメンバーが個人の体験を共有しあいます。
ストーリー①
Aさんは先月から都内の文房具メーカー「XYZ社」に入社しました。XYZ社では、新人の大半は、外回りから始めることが慣例となっており、Aさんも入社してすぐに営業部に配属されました。
一通り新人研修が終わったところで、Aさんは、先輩のBさんと一緒に取引先企業に挨拶回りをすることになりました。
新人研修でビジネスマナーは一通り学んでいましたが、いざお客さんの前に立つと、上手に振る舞うことができません。
そんなAさんを横目にB先輩はお客さんと談笑を交わしたり、さらっと新商品の提案をしたり、その立ち振る舞いはとても勉強になりました。
B先輩の振る舞いは新人研修では学ぶことができなかったものです。
Aさんは会社に戻ると、忘れないうちにB先輩の振る舞い方をノートに簡単にまとめようと思いました。
仕事も慣れてきた頃、Aさんが喫煙所で一服していると、違う部署の先輩Cさんと一緒になりました。AさんとCさんは喫煙所でたまに一緒になることがあり、しばしば雑談を交わす中で、今日も話をしていました。
Aさんは、取引先で自社製品に関する欠点を指摘されたことをCさんに話したのですが、普段客前に立つことのないCさんは、Aさんの話がとても新鮮だったらしく、Aさんにお礼を言って帰っていきました。
AさんはB先輩の営業のコツ、つまりB先輩の持つ「暗黙知」を習得しました。
ただし、AさんはB先輩の振る舞いを見て、自分の中に取り込もうとしただけなのでまだ「形式知」にはなっていません。
また、共同化は、仕事中だけでなく休憩中にも生まれやすいです。
Cさんは、喫煙所で休憩中にAさんの「暗黙知(=お客さんのところでの体験)」を聞くことができました。
このように、暗黙知がチームの中で共有され始めたら、これを誰もが目に見える形、つまり「形式知」に変えてあげることが必要です。
次にいきましょう!
Step2. 表出化
このステップでは、共有された暗黙知が形式知を産み始めます。
メンバーでグループディスカッションやブレーンストーミングを実施したりするステップがこれにあたります。
ストーリー②
新人のAさんは、B先輩の姿を見て学んだことをノートに書き留めてオリジナルの営業マニュアルを作成しました。
このマニュアルを使ってお客さんに対応していくうちに成績が伸び、営業部内でも一目置かれる存在になってきました。
同じタイミングで入社して営業部に所属した同期のみんなは、Aさんがどんな方法で営業をしているのか気になったため、同期のみんなで勉強会をすることにしました。
勉強会でAさんは、B先輩の対応が素晴らしかったこと、そしてその対応をまとめたオリジナルマニュアルを作ったことを紹介しました。
そして、そのマニュアルをみんなに見せて、自分がどんな営業をしているかを伝えました。
一方その頃Cさんは、Aさんから聞いた自社製品の欠点が忘れられません。
定例の会議の場で、思い切ってAさんから聞いた話をメンバーに伝えてみました。
会議のメンバーはなるほどといった表情で、他にも自社製品の長所や短所がないか考えたり、口コミを検索したりしてみました。
すると、XYZ社の商品はかつて「丈夫さやエレガントさ」が売りでしたが、今ではお客さんは「手軽さ」をXYZ社に求めていることがわかりました。
Cさんは、お客さんと自分たちの「認識がずれている」ことに危機感を覚えました。
表出化のプロセスでは、Aさんが営業のコツをマニュアルにまとめたように、暗黙知を形式知に変換します。
そして、このようにマニュアル化されてしまえば、勉強会や会議で他のメンバーに伝えることが可能です。
AさんとCさんの例のように、このプロセスはチームでの対話の中で行われることも特徴です。
Step3. 統合化
このステップではStep2で産み出された形式知が元から持っていた形式知と組み合わさることで新しい形式知を産みます。
たとえば、他の部署でやっている取り組みを取り入れてみるとか、複数のグループの作業をまとめたマニュアルを作成するなどがこれにあたります。
ストーリー③
営業部のD部長はAさんの営業マニュアルの話を聞きつけて、Aさんにそのマニュアルを見せてもらいました。
部長は大変関心し、新人研修で使っている営業の研修用資料を新しく作り替えるというアイデアを思いつきました。
その頃Cさんも、自社の商品の長所と短所を正しく認識するために、新人むけの商品マニュアルを新しく作り替えることが必要ではないかと考えていました。
たまたま、部を横断する会議でD部長とCさんはお互いの考えを伝えました。
すると、お互いに意気投合し、新人向けの研修マニュアルを作り替えたほうがいいのではないかという結論に達しました。
その後、最新の営業の心得や商品情報が掲載された研修マニュアルが完成し、XYZ社の新人研修では新たなマニュアルが活用されるようになりました。
ストーリーにもあるように、営業部の「形式知」とCさんの「形式知」が見事に融合されて、新たなマニュアル「形式知」が産み出されました。
このように、新しいアイデアが産み出されやすいのが、このステップの特徴です。
Step4. 内面化
最後のプロセスでは、Step3で産み出された形式知が再び暗黙知を産み出します。
これはつまり、組織として生み出された知識が、メンバー個人の中に取り入れられるということです。
ストーリー④
XYZ社では新たに作成した研修マニュアルを使って新人研修を行っています。
このマニュアルは、「痒い所に手が届く」内容になっていると社内でも評判になり、新人でなくてもこのマニュアルを読む人が増えてきました。
Aさんも改めてマニュアルを読むことで勉強になる部分が多く、特に商品の内容については知らないことがたくさんあったと反省しました。
この新しいマニュアルを参考にしながら、Aさんは自分の営業スタイルをさらに磨き上げていきました。
最後のプロセスでは、新しく生み出された知識、ここでいうと新しいマニュアル、が個々人の中に取り入れられました。
このように「暗黙知」が「形式知」を生み、その「形式知」が個人に取り入れられて「暗黙知」となる。
このステップがSECIモデルなのです。
これで、SECIモデルの4ステップは完了です!
しかし実は、SECIモデルはここで終わるのではなく、新たに産み出された暗黙知を元に、Step1から新しいプロセスが始まります。
まとめ ーSECIモデルを活用するにはー
知識を共有する
以上に見てきたように、組織で創造性を発揮するためには、個々人の知識を共有し合うことが大切です。
誰か一人が経験したことや学んだことを組織全体で共有することができれば、新しいアイデアが創出される可能性は高まります。
特に、個々人が経験として持っている暗黙知を共有することができれば、その知識が新たな知識を産み出す可能性を持つ可能性は高くなるでしょう。
「場」を設定してあげる
また、ストーリーでもみてきたように、人と人が知識を共有するには、何らかの「場」が必要です。
喫煙所や同期の勉強会のような会社の非公式な場から、会議のような公式な場まで、色々な場を作ってあげることが大切です。
近年では、SNSやオンライン上の場を設ける企業も増えてきていますね!
知識を共有し合うことで新しい知識が生まれる!
そのためには「場」を用意してあげることが大切!
勉強になったニャ!
早速明日からコミュニケーションを増やしてみるニャ!
どんな時でもコミュニケーションは大切だよね!
頑張って!
今回はSECIモデルについてストーリー仕立てで説明してきました!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
※なお、本記事で使用したストーリーは当サイトが作成した架空のものです。あくまでも、SECIモデルをわかりやすく伝えることが主眼なので、必ずしもこのストーリーのようにプロセスが展開するというものではありません。
(参考)
青山 征彦・茂呂 雄二. (2018). スタンダード学習心理学. サイエンス社
マイケル・ポランニー. (1980). 暗黙知の次元 -言語から非言語へ-. 紀伊國屋書店.
野中 郁次郎・梅本 勝博. (2001).知識管理から知識経営へ -ナレッジマネジメントの最新動向- .人工知能学会誌, 16(1), 4-14.